Exhibition “TWELVE LETTERS”
ソワレの只松さんは少しかわった人物かもしれません、
変わっていると言うとすごく変な人を想像するかもしれませんが、
実際はとても真面目で気が効いているし、話も面白い。
仕事は丁寧で常に先を見て行動しているみたいなところがあります。
がしかし、やはり少し変わっているような気がするのは
人とは違うところをみている只松さんだけの視点にある気がします。
彼が見ているのは僕らが目を向けているマウンドからからかなり外れた
外野席のおじさんが着るセーターの柄だったり、
高速道路を走るトラックの側面のキャラクターだったりして、とにかく独特です。
そんな視点を面白く感じ、やはりその目線を追いたくなる自分は
彼の書く物語を楽しみにしているファンの一人でもあります。
2016年始めよりドイツ・ベルリンに移り新店舗を始めた文具屋sowaleが、
少しだけ福岡に帰ってきます。
本展示会「TWELVE LETTERS」では新商品の2017年のカレンダーの販売に加えて、
ソワレのオリジナル商品、ドイツの文具も販売する予定です。
会期中の10/9には音楽と朗読 “TWELVE LETTERS”
10/8と12には只松靖浩による“詩の自動販売機”
を予定しています。
sowaleがベルリンで見つけたものを見て来たものを届けてくれるような展示になると思います。
どうぞお楽しみに。
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Exhibition “TWELVE LETTERS”
日時: 2016/10/4(火)- 10/12(水)13:00-21:00 ※10/10休
会場: toori 福岡市早良区城西2-13-27
期間中はsowale店主が在店いたします。
(Click!)
Event1 音楽と朗読 “TWELVE LETTERS”
福岡と東京の5会場で開催いたします。
朗読: 只松靖浩 清水藍子(福岡)岡安圭子(東京)
音楽: 西村周平
時間: 開場 19:00/開演 19:30
料金: ¥2500(会場により+1drink order)
予約: sowale/office@sowale.net
日時/会場:
10/9 (日)toori 福岡市早良区城西2-13-27
10/14(金)アトリエ穂音 福岡市博多区上川端9-35 A31 ゲスト/絵:比佐水音
10/15(土)café à table 北九州市戸畑区天籟寺1-4-12
10/16(日)Haco café 福岡市東区箱崎3-10-5-205
10/22(土)23(日)アトリエ・ハコ 東京都杉並区西荻南3-8-19 ヤマイチビル3F
Event2 只松靖浩 詩の自動販売機
あなただけの詩を綴ります。
日時: 10/8(土)10/12(水)19:00-21:00
会場: toori 福岡市早良区城西2-13-27
料金: ¥1000+1drink order
予約: sowale/office@sowale.net
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TWELVE LETTERS あとがき
最後にドアを閉じられてどのくらい月日を重ねただろうか
今ではもう使われていないその部屋は家具も景色もあの時のままだった。
白い壁に淡い紫で縁取られてた窓枠からは柔らかな日がさし
窓を開ければあのころと同じように街の香りを孕んだ風を呼び込む事ができる。
窓際の机にのこされた便箋の上にはオレンジ色のボールペンが一本、
ひとさし指と親指でもちあげると窓からの光にてらされた埃が
小魚の群れのように空中を舞った。
最後に二人にあったのは商店街に冬の間だけ出店する大学芋屋だった。
芋屋あなどるなかれ、なかなかの人気でちょっとした列が出来ている。
最後尾に立つとふいに後ろから声をかけられ、振り返ると二人の顔。
まだ本格的に寒くなる前だというのにしっかりとダウンジャケットを着込み、
それぞれ薄紫色の袋をもっていた。
近々、遠くに引っ越すことになったので、餞別を渡したいが
予想せずここで出会ったものだから、いま手元にこれしかない。
と、いって渡されたのは古い外国の地図だった。
その後世間話や無邪気な冗談が続き、
結局、なぜこれを手元にもっていたのか、引っ越し先と関係があるのか?
という質問は会話にあがらないまま大学芋を買う順番がまわってきて、
じゃあ、と二人に別れを告げた。
大学芋を片手に自分の部屋に戻りしばらく地図を広げてみていたが
聞いた事もない地名ばかりで国を想像する事も困難だった。
やがて飽きて机の引き出しにしまい込み、
ついに数年後の今日まで思い出す事は無かった。
きっかけはなんだったろうか、天気のせいかもしれない。
なかなか暑さがひかなかった夏がようやく終わり、
10月を残すところあと数日にしてようやく訪れた秋の空には
どこまでも途切れずに飛行機雲が続いている。
家に帰ろうとぼんやりしていたら最寄りの駅を乗り過ごし隣の区まで来てしまった。
どうせ家に帰ろうと予定もないと、気まぐれで降りた駅から
記憶を辿り彼らの過ごしていたアパートを探す。
かつて学生街だったこの街は、大学の校舎が移転となり今では人通りもまばらだが
それでも古くからの商店は今も軒に明かりを灯している。
信号をわたり、目印の中華料理屋の隣に今もしっかりとあのアパートは存在していた。
階段を上り、三番目の扉を前にし迷う事なくドアノブに手をかけたそのとき
誰かに声をかけられた気がして振り向くと、表札がわりの鯨の形をしたオブジェと目があった。
「やあひさしぶり。」
瞼の奥に広がる知らない街の景色。
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以上はフィクションです。好きです大学芋。
遅ればせながらsowaleの企画展、TWELVE LETTERS終了いたしました。
ハイライトはなんと言っても12の物語が添えられたカレンダーの朗読会だったように思います。
只松さんと清水さんの掛け合いと西村さんの音楽が混じり合い、
良い意味での緊張感がある素晴らしいライブでした。
sowaleは今年頭に福岡からベルリンに移転になりましたが
こういう形で繋がることが出来てとても嬉しく思っています。
遠くは離れたようでいて、より近い場所にいるような感じさえあるので人間の心は不思議ですね。
じゃあ、またねと言ってと福岡を去った只松さんとは、
近所で散歩しているとばったり出会ってしまいそうでもあり、
ひょうひょうとしていつも先の楽しいことを考えながら、今を楽しむ只松さんの行動には
目が離せそうにありません。
今後もこんな楽しい日々が続きますように。
お越し下さった皆様、sowaleの只松さん、
詩の朗読会で参加していただいた西村周平さん、清水藍子さんに心より感謝申し上げます。